再生医療で子宮内膜を活性化させるPRP療法
体外受精で良好な受精卵を何回も移植しても妊娠しない人の中には子宮内膜の厚さが薄く、ホルモン補充などの治療をしても厚くなりにくい方がいます。
そのような方に今、注目されている治療法、PRP療法(多血小板血漿)についてお話していきます。
子宮内膜が厚くならない
子宮内膜が厚くならない場合はホルモン補充療法によってエストロゲンを投与して内膜を厚くすることが一般的です。
その他に血流を良くするビタミンEや、ペントキシフィリンなどを単独や組み合わせたりして内膜の血流を上げる治療を行います。
しかし、治療をしていても着床しやすい内膜の厚さに到達できず、移植をキャンセルしたり、移植しても妊娠しないこともあります。
PRP療法とは
PRP療法は自分の血液から高濃度の血小板、PRP多血小板血漿を抽出して子宮内に注入する新しい治療法です。
PRPに含まれる様々な成長因子は細胞の組織を修復して成長を促したり、血管を新しくつくり出したりする働きがあります。
着床や妊娠の成立には子宮内膜の上皮細胞、間質細胞、血管内皮細胞、炎症性細胞(白血球、リンパ球)の4つが大きく関わってきます。
PRPで子宮内膜がかなり薄い方でも子宮内膜の細胞を活性化して再生能力を高める事で着床や妊娠しやすくなることが期待できます。
PRP療法は歯科や線形外科、皮膚科、美容外科ではすでに行われている高度な再生医療です。
再生医療の安全の確保等に関する法律の下でおこなわれ、厚生労働省の認可が必要になります。
国内でできる施設はまだ限られていますが、これから生殖医療の分野でも広く普及していくと思われます。
治療方法
治療はホルモン補充周期のD10とD12の2回行います。
当日採取したご自身の血液(約20ml)からPRPを30分かけて抽出します。
その後PRPを移植に用いるチューブで子宮内に注入し、PRPが子宮内膜に浸透するまで院内で30分ほど安静にしてから帰宅します。
治療後は副作用や痛みもありませんので普段通りの生活が出来ます。
2回目のPRP治療を終了したら胚移植をするという流れです。
このPRP治療では特殊な試験官とご自身の血液のみを使いますのでアレルギー反応などが起こりにくく、安全性の高いです。
また少ない採血量の中から炎症反応を引き起こす赤血球を完全に取り除いて高濃度のPRPのみを抽出することや、
感染リスクについても細心の注意を支払っていますので、身体的に少ない負担で安心して治療できます。
病院によってですが、要望があれば胚移植の周期からすぐに治療が出来ますので、限られた時間を有効に使って治療されたい方にもおススメです。
治療の流れ
血液を採取し、調整したPRPを子宮膣内に注入します。
通常、治療後の安静を含めて約1時間ほどかかります。
月経の周期の12日前後に2回注入し、子宮内膜の厚さをエコーでチェックします。
そのあとに胚移植を行います。
PRP療法の効果と結果
PRP療法は反復着床不成功例の方を広く対象にしていますが、内膜が7mmに達しないでなおかつ既往歴として子宮内膜ポリープやアッシャーマン症候群などによる子宮内癒着、流産を繰り返すなどの理由で子宮内の外科的処置をされたことがある方を対象にしています。
2019年9月から10名にPRP療法をして7名が妊娠、6名が妊娠継続しているという結果が出ています。
その中には子宮内膜が癒着剥離された方や移植時の子宮内膜が4mm以下のかたでも妊娠を継続されるそうです。
これまで移植しても成功してこなかった方が7名も妊娠されているので手ごたえのある治療法だと感じています。
一方でPRPに含まれるそれぞれの成長因子の有効性は分かっているものの、まだ100%解明されたわけではありません。
反復着床不成功例の原因には受精卵側の問題も関わってきますから治療の有効性には個人差があると考えています。
しかし、子宮内の外科的処置によって子宮内膜が薄くなりこれまでの手立てがなかった方にとって有効な治療であることは間違いありません。
今後は原因不明の反復着床不成功の方へ応用も検討していく予定です。
着所の成立には子宮内膜の上皮細胞からでるLIF(白血病阻害因子)が関わっていることは解明されていますのでPRPがLIFをつくり出せる可能性は理論的にあると考えています。
また海外ではPRPが習慣性流産や卵巣機能の改善に役立てられているという報告もあります。
ますは一つ一つの治療法をしっかり確立して応報の幅を広げていきたいと思っています。
鍼灸治療でも内膜が厚くなる
東洋医学では子宮の血流量が上がるツボに鍼やお灸をしてツボを刺激します。
それにより血流量が上がったり、薬が効きやすくなる効果が期待できます。
個人差がありますが、是非選択肢として取り入れてもらいたいです。