葉酸
体外受精にも葉酸が重要
葉酸を摂取していても、遺伝により、うまく葉酸を吸収できない、使えないという人がいるそうです。
ホモシステイン
葉酸は、体内でビタミンB6やビタミンB12とともに、ホモシステインというアミノ酸をメチオニンやシステインに変換します。
特に、葉酸をうまく使えない遺伝の女性は、ホモシステインをメチオニンやシステインに変換しづらいため、体外受精や顕微授精の治療周期の妊娠の有無や着床率にマイナスの影響を及ぼすことが、研究で明らかになりました。
この研究では、葉酸の摂取が胎児の先天異常のリスク低減だけでなく、体外受精や顕微授精の治療成績にも重要であることを物語っています。
研究内容
上海の国際和平婦幼保健院で初めてのART治療に臨む女性患者1,011名を対象に、治療前に血清ホモシステイン濃度を測定し、葉酸変換酵素(MTHFR)の遺伝子の特徴を調べました。
尚、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)と呼ばれている葉酸変換酵素には、3つのタイプ、CC 型、CT型、TT型があって、CT型は、CC型に比べて酵素の活性が約30%、TT型は約60-70%も低下することが知られています。
そのため、CT型やTT型の遺伝子特徴をもっている女性は葉酸の変換がうまくいかなくなり、葉酸が不足してしまうリスクがCC型の女性に比べて高くなります。
そして、遺伝子タイプ別にホモシステイン濃度と治療成績の関係を調べました。
結果
ホモシステイン濃度は妊娠した女性に比べて妊娠できなかった女性のほうが高いことがわかりました。
また、遺伝子タイプ別に調べてみると、TT型の女性のみ、ホモシステイン濃度が高い女性は低い女性に比べて、妊娠できないリスクが高くなり、着床率も低いことがわかりました。
ホモシステインとは?
ホモスシテインとは、必須アミノ酸であるメチオニンが変換されるプロセスでつくられるアミノ酸です。
メチオニンの変換プロセスに必要とされるのが、葉酸やビタミン B6、ビタミン12で、これらが不足するとホモシステインからメチオニンの変換が停滞します。
つまり、葉酸やビタミンB6、ビタミンB12の不足がホモシステイン濃度上昇を招くというわけです。
その結果、ホモシステインがだぶつき、高濃度になると、動脈硬化など、さまざまな悪さを働くことが知られています。
妊娠や出産に際しても、このホモシステインの濃度が上昇すると、たとえば、胚の発育障害や胚質の低下、さらには、早産や流産、不育症のリスクが高くなるという研究報告がなされています。
葉酸変換酵素の遺伝子タイプ
同じホモシステイン濃度が高くても、MTHFRと呼ばれている葉酸変換酵素のTT型という遺伝的な特徴をもつ女性は、それ以外の遺伝子タイプの女性に比べて、ホモシステインの高濃度がART成績にマイナスの影響を及ぼした可能性が高かったわけです。
ちなみに、日本人女性では葉酸変換酵素のTT型は、約15%いることがわかっています。
その為、TT型の女性はホモシステイン濃度が高い可能性がありますから、妊娠を計画したり、不妊治療に臨む際には、まずは、ホモシステイン濃度を下げておくことがとても重要です。
もちろん、葉酸変換酵素の遺伝子タイプを遺伝子検査で調べたり、血液中のホモシステイン濃度を測定すれば、わかりますが、どこでも簡単に受けられる検査ではありません。
葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12のサプリメントを補充する
たとえ、TT型であっても、すぐに葉酸とビタミンB6、ビタミンB12の入っているサプリメントを摂取することで問題が解決されます。
葉酸変換酵素の遺伝子タイプがTT型で葉酸変換能力が低くても、葉酸のサプリメントを1日に400μg以上摂取することで、CC型やCT型と同じレベルの葉酸濃度に達し、ホモシステイン濃度の上昇を防ぐことが出来ることはわかっているからです。
葉酸単体よりも、ビタミンB6とビタミンB12がしっかりした量を一緒に摂取するほうがホモシステイン濃度の低減効果が高くなることが知られていますので、出来れば葉酸とビタミンB6、ビタミンB12がしっかりした量で入っているサプリメントがお勧めです。
葉酸サプリメントは胎児の先天異常の予防だけではない
そもそも、葉酸は新しい細胞がつくられるのに必須のビタミンです。
妊娠のスタートは受精後の細胞分裂、増殖です。
つまり、妊娠の成立や維持とは、すなわち、正常な細胞の分裂と増殖が、延々と続くわけです。
そのため、妊娠時には、葉酸の必要量が跳ね上がります。
このように、正常な細胞の分裂、増殖のために、妊娠前から葉酸をしっかり補充することが極めて重要なのです。
最後にご注意いただきたいのは、だからと言って、たくさん摂れば摂るほどいいわけではないということです。少な過ぎても、多過ぎても、よくないです。
なぜ葉酸は必要?妊婦の必要な葉酸の摂取量といつまで気を付けるか。
もっと詳しい厚生労働省の葉酸のページ