子宮内膜とは
子宮の内側の壁を覆い、月経周期に対応し増殖・剥離を繰り返し、妊娠の準備や維持においてとても大切な部分となります。
子宮内膜は月経の周期により変動します。
(月経期)エストロゲン・プロゲステロンの減少により子宮内膜が剥がれ排出される
(卵胞期)エストロゲンにより子宮内膜が増殖・肥厚する
(黄体期)エストロゲン・プロゲステロンとともに子宮内膜を受精卵の着床と発育に適した状態にする
子宮内膜の厚さと妊娠率
不妊治療において受精卵が着床する子宮内膜はとても重視されていて、子宮内膜の厚さと妊娠率についても多くの論文が発表されています。
この論文の中には子宮内膜は妊娠率に関係しないと主張も見られますが概して薄ければ妊娠率が下がるとする報告が多くあります。
妊娠が成立するためにはある程度以上に子宮内膜の厚さが必要であるという考えは広く周知されており、着床に必要な最低の内膜の厚さとして5mm~8mmまでの数値が報告されています。
(子宮内膜は蠕動運動をするため同じ瞬間に測っても違う数値がでるので子宮内膜の測定は一回のみではなく数周期の平均をだすべきではないかと考えられます)
子宮内膜が薄くなる原因
子宮内膜が薄くなる原因として以下のことがあげられます。
・排卵誘発剤が適切ではない
クロミフェンの副作用によるもの。クロミッドを使用すると子宮内膜が薄くなることがあります。
クロミッドを使用すると必ずなるわけではありませんが、使用期間が長期化すると内膜が薄くなることがあります。
・子宮内膜の計測誤差
子宮内膜は生理中は薄く、女性ホルモンの増加とともに徐々に厚みを増し、排卵日付近になると厚くなってきます。子宮内膜は排卵の直前に測定しますが、先ほども述べましたが子宮内膜は蠕動運動をするため同じ瞬間に測っても違う数値がでることもあります。このため薄いと診断されていても問題ないケースが多くあります。
・女性ホルモン不足
子宮内膜は卵胞から分泌されるエストロゲンをいう女性ホルモンにより厚みを増やします。
このホルモンが上手く働かず子宮内膜が厚くならないことがあります。
・子宮内膜の機能
過去に子宮内の手術を受けた・出産の際、胎盤が剥がれにくかった場合など子宮内膜がダメージを受けたために起こることがありますが、原因不明の割合が多いです。
治療法
・ホルモン補充
ホルモン剤を使用し子宮内膜を厚くさせる方法です。
・PRP療法
PRPの主成分は血小板です。血小板は、血液に含まれる成分で、指を切ったときなどに出血を止める働きがあります。また血小板は、血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)など様々な細胞成長因子を含んでいます。
これらの成分が傷口で放出されると、傷口の細胞増殖が活発になり傷の治りが早まります。
PRPを子宮内に注入すると、これらの成長因子が子宮内で放出されます。その結果、子宮内膜で細胞の成長が促進され、子宮内膜が厚くなることが期待できます。
子宮内膜が厚くなると移植した胚が着床しやすくなりますので妊娠が期待されます。
・G-CSF
サイトカインの1種で顆粒球産出の促進、好中球の機能を高める作用があります。
サイトカイン(cytokine)とは、免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質で、標的細胞は特定されない情報伝達をするものをいいます。
顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte Colony-Stimulating Factor:以下G-CSF)は、国内で承認を受けた薬剤(顆粒球増加作用)で、注射剤として広く日常の診療に用いられています。主にガン化学療法による好中球減少症や再生不良性貧血に伴う好中球減少症に用いられています。
G-CSFの適応
胚移植で妊娠の可能性を高めるためには、厚さ7mm以上の子宮内膜が必要であることが知られています。ホルモン補充下凍結融解胚移植周期では、子宮内膜をこの厚さにするために、月経開始後からエストロゲン製剤を使用しています。しかし、患者の約1%はエストロゲン製剤を使ってもこの厚さに届かず、胚移植を延期せざるを得なくなります。
これまでに薄い子宮内膜を改善するべく、いくつかの薬剤が試されてきましたが、いずれも十分な効果をあげているとはいえませんでした。
胚移植の2~9日前にG-CSF製剤を、子宮内腔に1回投与することによって子宮内膜の厚さが改善し、その結果妊娠率が大幅に向上したことが米国生殖医学会雑誌に報告されました。
この報告を受けて、不妊治療領域で胚移植時に子宮内膜が厚くならない症例や反復不成功例に使用されています。(子宮内膜が7mm以上の厚さに到達せず、その結果反復して胚移植が延期となった経緯を持つ方、反復不成功例の方が適応となっています)。
・内膜スクラッチ
内膜スクラッチとは、着床の前にわざと子宮内膜に小さな傷をつける方法です。傷をつけると、内膜は修復の過程でインターロイキンなどのサイトカインを分泌します。
これらのサイトカインは傷を修復する上で分泌されるのですが、胚が着床する環境でも同様の因子が分泌され、着床の促進と免疫応答の正常化が多くの論文で報告されています。
着床しやすい子宮環境を、子宮内膜に傷をつけることで故意的に作りだす方法を内膜スクラッチといいます。
子宮内膜と鍼灸治療
当院でも、「 色々な治療法を試してみたけれど子宮内膜が厚くならない 」とご相談を受けることがあります。相談を受けた方の体の状態をみてみると、お腹の血行不良や冷え、気の停滞、筋力低下などがみられます。
鍼による治療は、子宮動脈の血流を料を増やすことへのアプローチを主に行っていきます。
ほかにも、お腹に手をあててみて下さい。
お腹は冷えていませんか。お腹がドクドクと脈をうつような感覚はありませんか。
お腹が冷えていると血行も悪くなり栄養が運ばれてきません。腹巻を使用しお腹周りが冷えないよう心がけましょう。この時お腹だけを意識するのではなく腰やお尻の部分も冷えていないか、温められているのかみてみましょう。
また、日々忙しく時間に追われシャワーだけで過ごされている方も適度に入浴し体全体を温めるよう意識してください。
立ちっぱなしや長時間座りっぱなしの方は血液が体全体に循環していません。通勤中、一駅分歩いてみたり、休みの日に運動することを取りいれてみてください。
お腹がドクドクと脈をうつような場合、自律神経が乱れている可能性があります。疲れやストレスが溜まっていませんか。
自律神経の乱れはお腹だけでなく頭痛やめまい、冷え、動悸、便秘や下痢、月経不順など全身に症状が出てきます。
鍼灸治療はお腹の冷えを取り除いたり予防する効果や、自律神経を整え全身を調整し様々な症状の緩和につながります。
子宮内膜でお悩みの方は、自分の身体の状態知るところから始めてみるのはいかがでしょうか。どこが改善すべき点なのか理解することでどのような生活を心がけたらいいのか気付きがあるのではないでしょうか。
関連ブログ:子宮内フローラ