流産は卵子の質?
妊娠はするが、2回以上の流産や、死産を繰り返し、子供が生まれてこない症候群のことをさします。
不育症は原因がわからないことが多く、不育症検査でもはっきりしないこともあります。
たまたまだったかもしれないというケースが多くあることで、厚生労働研究班による不育症のリスク因子別頻度では検査をしても明らかな異常が判らない方が65.3%にも存在するとしています。
理由がわからないことが多いのですが、なぜ流産するのかと答えを求める方が多く、卵子の質ではないかというのもよく聞きます。
卵子の質といわれると、女性の卵子の質と思ってしまいますが、この場合の卵子の質は受精卵の質なので、精子の質についてお話します。
精子の質
最近、母体や卵子ではなく、精子が関与する可能性もあるという研究報告がよく聞かれるようになりました。
通常、男性の一般的な精液検査は、精液中の精子数や運動率、奇形率などを調べます。動きや量を調べる検査です。
しかし、精液中にいくら元気な精子が多くいても、良質かどうかは別なので、質が悪ければ、受精率や受精後の胚の成育にマイナスの影響を及ぼすことが知られています。
つまり、精液検査で数値が基準をクリアしていても、精子の質が悪ければ妊娠に悪影響を及ぼす可能性があるというわけです。
精子の質を調べる
それでは、精子の質はどのように調べるのでしょうか。
精子DNAの断片化率が精子の質をあらわす目安になると考えられています。
精子DNAの断片化というのは、精子の頭部に格納されているDNAが損傷し、二重らせん構造の鎖がちぎれていることです。
精子DNA断片化率とは、精子DNAが傷ついた精子の割合のことです。
最新の世界保健機関(WHO)ラボマニュアル第6版では、精子の質を評価する新たな項目が追加されました。追加された評価項目を調べる検査に、精子DNA断片化指数(DFI)検査・精液中酸化還元電位測定(ORP)検査があります。
精子DNA断片化指数(DFI)検査
精子DNA断片化指数と、精子核が未熟な精子(HDS)の割合を調べる検査です。
精子DNA断片化指数が高い場合、受精率、胚発生率、妊娠率の低下、逆に流産のリスク、子の異常の頻度が高くなったりすることが報告されています。
また、男性の不妊に関わらず加齢に応じてDFIが増加することが知られています。
精液中酸化還元電位測定(ORP)検査
精液中の酸化還元電位(酸化ストレス度)を測定する検査です。
ORP(Oxidation Reduction Potential)とは酸化還元電位のことで、酸化物質と抗酸化物質との関連を示し、精液中の酸化ストレスの指標になると考えられています。
酸化ストレスは、精子DNA損傷の主な原因とされています。不妊症の男性は、精液中の活性酸素濃度が高く、抗酸化物質の濃度が低い可能性が高いという研究結果があります。
精子のDNAを損傷しないためには
精子DNAを傷つけるのは、主に酸化ストレスによるもの、すなわち、活性酸素によるダメージです。
精子の質を悪くしないためには、精子の質の低下を防ぐには酸化ストレス対策が重要です。
そのため、病院などでも抗酸化作用のあるサプリメントや生活習慣の改善をお勧めしています。
- 禁煙(たばこが精子DNA断片化させ、精子の質を低下させます。)
- 高温を避ける(精巣は高温環境に弱いため、下着はブリーフを避け、トランクスが推奨されます。)
- 抗酸化サプリ(コエンザイムQ10やビタミンC、ビタミンEが推奨されます。)
- 精索静脈瘤(精索静脈瘤は酸化ストレスと共に陰嚢内の温度まで上昇させます。)
- 禁欲期間(毎日、少なくとも1週間に3回は射精すると精子DNA断片化率が低下します。)
女性の卵子と違い、男性の精子は毎日つくられています。
日々の努力がカギとなります。ストレスを感じない程度に生活習慣を見直しをしてみましょう。
精子の質を悪くしないことは男性自身の健康管理にもつながります。
気を付けていただきたいのは、精子の質の低下は、授かりづらくなったり、不育症の原因になる可能性があるということです。
また、男性は一般の精液検査で問題がないといっても、一概に安心できるとはいえないかもしれません。
当院は鍼灸院ですので検査などは、行っていません。なかなか授からない方への選択肢としてご紹介いたしました。